あんぱんまん 作・絵 やなせたかし

育児

ひろい さばくの

まんなかで、

ひとりの たびびとが おなかが すいて、 いまにもしにそうに

なっていました。 そのとき、

にしの そらから おおきな とりのようなものが ちかづいてくるのが みえました。


とんできた ふしぎな ひとは

いきなり たびびとに いいました。

「さあ、ぼくの かおをたべなさい。」

たびびとは びっくりしまして、

「そんな おそろしいことは できません。」

と ことわりましたが、そのひとは

「ぼくは あんぱんまんだ。いつもおなかのすいた ひとを たすけるのだ。

ぼくのかおは とびきりおいしい。

さあ、はやく!」

と せきたてるのです。


「ごめんなさい、 では ちょっとだけ。」

たびびとは おそるおそる

あんぱんまんの あたまに

かじりつきましたが、

そのおいしいことは

びっくりするぐらいでした。

そして、ちょっとだけじゃなくて、

たくさん たべました。


あんぱんまんの かおは

はんぶんぐらいに なりました。

たびびとは

すっかり げんきになり、

「ありがとう。あんぱんまん。おかげで、たすかりました。」

と おれいを いいました。

「さようなら、がんばれよー。」

あんぱんまんは さっと

くうちゅうに とびあがります。


ゆうぐれの おらを

あんぱんまんが

とんでいます。

でも すこし げんきが

ないようです。

ふかい もりの

ところへ くると、

あんぱんまんは

すいこまれるように

もりの なかへ

おりていきました。


もりの なかでは、

ひとりの こどもが

おなかを すかして

ないていました。

きれいな ちょうを

おいかけているうちに、

みちに

まよってしまったのです。

だんだん あたりは

くらくなってきます。

おなかは すくし、

おそろしいし、

こどもは とうとう

なきだして

しまいました。


そのとき あんぱんまんが ひらりと

とりのように おりてきました。

「ないているのは きみだったのか、

もうだいじょうぶだ。あんしんしなさい。」


あんぱんまんは

こどもを せなかに

のせて ひらりと

よぞらに とびたちます。

「おなかが すいたろう。

さあ、ぼくの かおを

かじりなさい。

ぜんぶ たべても

いいんだよ。

あまくて おいしいから

すぐ げんき なれる。」


「あんぱんまん、かおが なくても だいじょうぶなの。」

「しんぱいしないで いいんだ。それじゃあまたね さようなら。」

あんぱんまんは こどもを ぶじに いえまで おくりとどけました。

あんぱんまんの かおは、 すっかりたべられて なくなっていました。


きゅうに おてんきが わるくなり

そらが まっくろになって

おおつぶの あめが ふってきました。

あんぱんまんは

むちゅうで とんでいましたが、

そのとき ものすごい かみなりが なって

あんぱんまんは まちはずれの

おおきな えんとつの

なかへ ついらくしました。

あぶない!

あんぱんまん しんだのでしょうか。


それは ぱんこうばの

えんとつでした。

ぱんつくりの

おじさんは、

かおの ない

あんぱんまんを みると、

にこにこしながら

「よしよし、また あたらしい かおを つくってあげるよ。」

と いいました。


ぱんつくりの おじさんは、

ぱんやきの めいじんです。

「どれどれ、 あたらしい ぱんは やけたかな。」

おじさんは、 ぱんやきがまの ふたを あけます。

「よおし、 こんどは もっと おおきい ぱんに して

もっと おいしい あんこを

いっぱい いれておいたよ。

さあ、できた。」

あんぱんまんは まえよりも ふっくらとした かおに

なりました。


「それじゃあ、 また おなかの すいた ひとを たすけに いってきます。」

あんぱんまんは、 すぐに またしゅっぱつです。

おじさんは、とんでいく あんぱんまんを みおくりながら

「がんばらなくっちゃ。 あんぱんまんー。」

「がんばらなくっちゃ。 あんぱんまんー。」

と おおごえで さけびました。


あんぱんまんは

きょうも

どこかの そらを

とんでいます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました